マンモグラフィー
乳がんはある程度の大きさになると、乳房を観察することでさまざまな情報を得ることができますから、問診や視診・触診は、他のがん以上に重要です。しこりがわかれば、その大きさを計測したり場所を推測できます。また、しこりがない場合でも、乳頭の分泌から早期がんが見つかることもあります。
画像検査の中心はマンモグラフィーです。しこりの存在を見つけるだけでなく石灰化を見つける能力も優れています。マンモグラフィーとは、乳腺専用のレントゲン検査のことです。2枚の板で乳房を挟んで、平べったくして撮影します。こうすることで、しこりとその周囲にある正常乳腺の差が際立つためです。また、放射線の量を少なくして、被曝を抑える目的もあります。上下・左右から圧迫してそれぞれ撮影します。しこりがある場合は白く映し出されます。周囲の組織を引き込むような、ギザギザの形をしているのががんの特徴で、これをスピキュラといいます。
超音波検査は手軽にできます。仰向けに寝て乳房にゼリーを塗り、センサーを乳房にあてて移動させると、モニターに乳房内部の画像が映し出されます。超音波では、しこりの中身がわかります。しこりが腫瘍か嚢腫(のうしゅ)か、簡単に区別できるという利点があります。しかし、良性・悪性の識別までは難しいうえ、マンモグラフィーのように石灰化を見つけることも無理なので、早期がんの発見という点ではマンモグラフィーにかないません。
画像検査では、5mm程度の大きさの病変ついては発見可能です。ただ、がんであることを確定するためには、がん細胞の存在を確認しなければなりません。そこでしこりに細い針を刺して細胞を取ってくる穿刺吸引細胞診が行われます。これで乳がんの80から90%がわかります。
細胞診で診断がつかない場合は、細胞の塊である組織をとって検査することになります。組織を採取すれば、単に診断を確定できるだけでなく。ホルモン療法や分子標的治療が可能かどうかを調べることもできます。
生検には針生検と外科的に切開して組織をとる摘出生検とがあります。身体に与える影響が大きい摘出生検はあまりおこなわれなくなっています。
針生検で使われる針は、細胞診の針よりは太く、鉛筆の芯ぐらいはありますから、おこなうときは局所麻酔が必要です。
針生検には2つの方法があり、ひとつは専用の針をしこりに刺して組織を切り取ってくるバネ式針生検、もうひとつはバネ式針生検より太い針で陰圧をかけて組織を吸引して切り取ってくる吸引式針生検(マンモトーム)です。バネ式針生検装置は針も細く手軽におこなえることから、超音波検査でわかるしこりの組織診としてよく利用されています。ただ、しこりがなく、微細な石灰化が残っている場合には、より組織を大きく吸引できるマンモトームのほうが優れています。バネ式針生検に比べてやや傷は大きくなるものの、それでも4〜5mm程度の切開で済みます。
触ってもわからないような小さな病変に対してはマンモトーム生検をおこないます。うつぶせに寝てマンモグラフィーの要領で乳房をはさみX線撮影します。そうすればマンモグラフィーと同じ画像が得られます。こうして得られた映像をコンピュータで3次元処理し、病変の位置を特定し、画像を見ながら針を誘導して病変の組織だけを間違いなく採取できるようにしたシステムです。通常の針生検よりは太い針を使いますが、先端には溝がついており、患部に刺した後、内刃が動いて組織を切り取り、それを吸引して取り出します。1回の穿刺で何回でも吸引でき、小さいしこりなら全て取りきってしまうことも可能です。
通常30分ほどかかり、その間ずっと乳房を圧迫し続けます。これと全く同じ原理で超音波の画像を使ってもできます。
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